「やっぱり、必要ありませんので・・・」
これは私が保険営業の駆け出しのころ、代理店に同行しお客さまに言われた言葉です。
もう30年近く経過しますが、今でもその事を鮮明に記憶しています。
当時、「保険には付保目的があり性別や年齢、家族構成で提案する内容が大きく異なる」という事を学びました。
いわゆる「ニードセールス(お客さまのニーズにあった商品をカスタマイズして販売する)」という考え方です。
同行先は30歳代の単身の女性で独り暮らしという情報を得ていました。それまで同様の状況の方の営業同行を
重ねており、成約もほぼ確実なパターンが自分の中にあり、その時も自信を持って面談しました。
結論から言うと、お客さまの老後に備えた資金準備の為の終身保険と長期入院で経済的なものをカバーする医療保険のシンプルな
提案内容です。これを慣れた自分の営業ストーリーに乗せ、饒舌に?語っていきました。
しかし、今までの営業のように上手く事が展開しないばかりか、お客さまの表情も硬いまま、同行を終える事になります。
その際に発せられたのが、冒頭の言葉です。
何故、保険を活用した自身の老後に備える考え(貯蓄と医療)がお客さまに受け入れられなかったか、想像もつきませんでした。
以下はその数日後に代理店が再訪し判明した内容です。
アプローチしたお客さまには高齢で障がいをお持ちのお母さまがいらっしゃり、少し遠方で独り暮らしをされているとのこと。
定期的に安定した収入もほぼなく、その経済的な支援をその方が担っているとのことでした。
また、その方には兄弟姉妹はなく自身に不慮の事態が発生した場合は、誰が自分の母親の面倒を見てくれるのか、一番気がかりで
心配していると語ってきたようです。
その時に気付かされたのが「人の想い」です。独りよがりのニードセールスは全く親身になった提案ではありません。というより真のニードセールスを履き違えており、理解していなかったことに気付かされた瞬間でした。
更に相手の気持ちを汲み取るという視点も欠けていたのも明らかです。
保険には損も得もなく、将来起こるかもしれない事態に、如何に経済的な安定を提供できるか、これに尽きます。
また、その心理的な不安を少しでも払拭することが、保険の本質的な役割です。
生命保険は究極の言い方をすれば、「命と引き換え」の商品です。万が一のことが起きてからは、やり直し(買い直し)も叶いません。
これを礎に今まで自問自答して過ごしてきました。
保険の世界では自分と他者を置き換えてその将来像まで考えられる、これは人が介在する意義として最も枢要なことの一つです。
直近で思うのは分析をはじめ、データ重視の今、「心を教えることの重要さ」です。
現在私が働くカスタマーセンターは社内で最大のお客さまとの接点部署です。更に前述の感覚も「寄り添い」をはじめ十分発揮できます。
これからも「感性」を大切に、管下メンバー一同、五感の醸成を図っていきます。