読了目安:4分

【体験談】突然の子宮体がん診断 がんサバイバーが体験した心と体、そしてお金の負担

Aさん(仮)は現在57歳の主婦で、2013年に子宮体がんと診断されるまでは正社員の事務職として働いていました。治療後もリンパ節に転移が見つかったため抗がん剤治療を実施し、その後も定期的に通院して検査を受けるなど、現在もがんと戦い続けています。当時から現在の状況までを振り返っていただき、がんサバイバーとして体験した心と体、そして経済的な負担のリアルについて伺いました。

健康診断がきっかけでがんが発覚。長い戦いがはじまった。

子宮体がんと診断を受けたきっかけを教えてください。

会社で年に一回受けていた健康診断で、重度の貧血であることが判明したのがきっかけです。ただ、重度の貧血といっても最初は特に気にしていませんでした。当時は40代前半で少し体力が落ちてきたのは自覚していましたが、貧血自体は昔からよく起きていましたから。軽い気持ちで指示通りに再検査を受けにいった結果、間もなく20日間の検査入院となり「子宮体がん(ステージⅢB)」と診断されました。

窓際でほほ笑む子宮体がん経験者のAさん

診断を受けた時のお気持ちについて教えてください。

40歳を過ぎて多少の体力の低下は感じていたものの、事務職としてバリバリ働いていましたし、なによりも親族にがん経験者がいなかったので、ショックよりも信じられない気持ちの方が大きかったです。
少し冷静になると「お酒もたばこもやらなかったのになんで私が!」と憤りを覚えましたが、さらに頭が冷えると「仕事を続けられるのか」とか「収入が減って治療費が増えたら今まで通り生活できるか」といったリアルな不安に変わっていったのを覚えています。長女が家を出て、主人と愛猫と3人暮らしだったので「誰が猫の面倒を見るのか」といったがん治療中の不安や悩みも次第に大きくなりましたね。

ライターコメント

子宮体がんは「子宮体部」にできるがんのことです。5年相対生存率は81.3%。女性の主要部位においては乳房に次いで高い数値となっています。罹患数は乳がんの4分の1ですが、24歳から54歳にかけて罹患率が高まるため働き盛りの女性にとっては非常にリスクが大きい病気といえるでしょう。

長く続く手術、抗がん剤治療で経過観察中に転移も。日に日に大きくなる「お金」の不安

手術や治療の内容はどのようなものでしたか?

自宅の近くに総合病院がなかったので、約40キロ離れた病院で治療を開始しました。2週間入院し、子宮と卵巣・卵管を取り除く手術を受けました。手術後も約7ヶ月間は抗がん剤治療を受けていました。手術の後遺症などはほとんどなかったですが、抗がん剤治療の副作用は覚悟していた以上に大変でしたね。特に手足のしびれや関節痛がひどく、以前のような生活はとてもじゃないですが送れませんでした。それでも家族や猫の支えもあって、前向きに人生を送ろうとしていた心が折れそうになったのは、7ヶ月間の経過観察を経て行った検査のときです。その検査で、今度は「リンパ節にステージⅣ」のがんと診断されてしまったのです。前回よりも進行度が高いのもショックでしたが、何よりも「また抗がん剤を飲まないといけないのか」といった恐怖が大きかったです。

笑顔で写る子宮体がん経験者のAさん

1~2回目の治療の際、日常生活ではどのようなお気持ちだったのですか?

心や体はもちろんですが、日が経つにつれて「お金」の不安が大きくなっていきました。1回目の治療後、本当は休職中だった仕事に復帰したかったのですが、抗がん剤の副作用のせいで長時間同じ姿勢でキーボードを打ったり、細かな作業をするのは難しく「さすがに働けない」と退職を決意。経過観察中には派遣社員として社会復帰したものの、すぐにステージⅣが発覚してしまいました。投薬のために毎週木曜日~日曜日の4日間、通院しなければなりませんでしたが、今度は会社を辞めずに木・金曜日は仕事を休みつつも働き続けていました。正直、かなり辛かったですがそれでも家計を圧迫する薬代や将来の不安を少しでも解消するためには働くしかなかったのです。

ライターコメント

がんの告知を受けた人や治療中の人、治療が終了した人、または患者さんの家族や友人といった人のことを「がんサバイバー」といいます。医療技術の進歩によって、がんサバイバーの人数も増加傾向にあるため、Aさんのようにがんの治療や検査を受けながら生活する人への支援の重要性が高まっています。がんと長く付き合っていくための将来設計や備えについても従来とは異なる意識を持つ必要があるのではないでしょうか。

がんになるまで盲点だった「お金」のリスクと大切さ

がんによる経済的影響はどのようなものだったのでしょうか?

まずは「がん治療には手術や薬代以外にもお金がかかる」ということを、私自身ががんになるまで知らなかったことを反省しています。治療には健康保険や高額医療費制度などが適用されても、ある程度お金が必要なことはなんとなく分かっていました。ただ、自己負担額が想像以上だったうえ、さらに健康保険適用外の治療費も上乗せされて、入院時のベッド代や食事代、30万円もする医療用ウイッグの代金なども加わります。この10年間くらいで自己負担額は約200万円程度かかりました。また、抗がん剤治療の副作用で発症した「糖尿病の治療費」も別途発生しました。当然、がんが発症してからは以前のように働けないので収入は100万円以上減少。トータルでは300万円くらい赤字になっていると思います。

Aさんの治療内容と医療費の自己負担額を表しています。2013年4月に発症し、約10年間で自己負担額約200万円、収入減少は約100万円、合計支出は約300万円でした。

一番大変だったのは夫かもしれないですね。家事や仕事を私の分までやらなければならなくなりましたから。ただ、元々家事を分担していたこともあってか淡々とこなしてくれていたと思います。あと、本当に大変な時は義父母も手伝ってくれました。みんなには今でも感謝しています。

前向きな表情の子宮体がん経験者のAさん

がんによる経済的影響はどのようなものだったのでしょうか?

がんのリスクについてちゃんと向き合って「一時金のもらえる保険に入りなさい!」と言いたいです。治療中はもちろん、経過観察中も含めて心と体の負担を軽減させるためには「お金と生活の不安」を軽くするのはとても効果的だと思います。もし一時金がもらえたら、治療費の負担だけでなくそのお金で趣味を考えるなど、リフレッシュのためにもとても重要なことだと思います。「家族にがんになった人がいないから」「不摂生していないから」といってリスクから目を逸らすのではなく、後悔しないためにも真剣に検討しなさいと言いたいですね。

ライターコメント

がん保険でもらえる給付金額はケースバイケースですが、Aさんの場合は300万円の赤字に対して350万円を受け取れる可能性もあります。まずはどんな保険があるのか、調べるところから始めてみてはいかがでしょうか。

公式SNSアカウント一覧

  • YouTube
  • X
  • LINE