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がん保険は必要?悩んだときに押さえたい備え方の基本

がん保険は、公的医療保険で補えない高額な治療費の自己負担に備えることができます。近年、通院治療が増加し、さまざまな治療方法も選択できるようになりましたが、がん保険の診断一時金や治療給付金、先進医療を対象とした給付金などを活用することで、その備えを強化できます。
自分に合う保障を選ぶには、健康状態や生活に合わせて必要な内容を見極めることが大切です。ここでは、公的データをもとに、がん保険の基本と選び方を解説します。

がん保険とは

黄色いお財布と電卓 

がん保険は、公的医療保険で補いきれない高額な治療費の自己負担に備えることができる民間保険です。近年、通院治療が増加し、さまざまな治療方法も選択できるようになりました。診断一時金や治療給付金、先進医療を対象とした給付金などを通じて、万が一のがんへの備えを強化する手段として、がん保険は注目されています。

なぜ今、がん保険が注目されているのか?

がんは日本人にとって最も身近な重大疾病の一つです。厚生労働省の「令和5年人口動態統計」によると、日本で亡くなる方の死因第1位はがん(悪性新生物)で、全死亡者のおよそ4人に1人ががんで亡くなっています。

近年、通院治療が増加し、手術だけでなく、抗がん剤治療、放射線治療、そして免疫療法や遺伝子治療といった多様な治療方法が選択できるようになりました。特に、個々のがんの特性に合わせた「がんゲノム医療」の進展によって、標準治療以外に先進医療や患者申出療養、自由診療などを選べる時代になりました。しかし、こうした最新の治療は公的保険の対象外となる可能性が高く、高額な自己負担が必要です。厚生労働省の先進医療の2024年度(2023年7月1日~2024年6月30日)の実績 によると、陽子線治療に要する費用は約268万円※に上ります。また、高額療養費制度を利用した場合でも、先進医療にかかる費用や差額ベッド代、付き添いの交通費などは対象外です。

  • 出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第603回)先進医療の実績報告について」(陽子線治療の先進医療総額と年間実施件数より、平均額を当社で算出)

このような「もしもの経済的リスク」に備えて、足りない部分をがん保険で補うことができます。

がん保険で備える意味と効果

がん保険の一番の役割は、治療費の負担を減らすことで、安心して治療に専念できる環境をつくることです。治療が長引く、休職で収入が減るようなときでも、がん保険で備えておけば生活費を補えるので、家計への影響を最小限に抑えられます。もしものときに「お金の不安が少ない」ことは、精神的な支えにもなります。家族に負担をかけずに済むという安心感も、がん保険の大きな価値です。

がん保険の必要性とメリット

想像以上に医療費がかさむリスクも。治療費の現実

がん治療は入院や手術に加え、長期の通院や投薬が必要になることも多く、医療費が思った以上にかさみます。また、がん医療の進歩によって生存率が向上した結果、治療の長期化や薬剤費の高額化も顕著です。標準治療だけでなく、先進医療を選択すると、自己負担はさらに大きくなります。

先進医療は公的医療保険の対象外のため費用は全額自己負担となり、さらに治療のために仕事を休職する場合、収入が減ることも考えなければなりません。


総医療費が100万円、うち先進医療に係る費用が20万円だったケース

  1. 1.先進医療に係る費用20万円は、全額を患者が負担します。
  2. 2.通常の治療と共通する部分(診察、検査、投薬、入院料 *)は、保険として給付される部分になります。
    保険給付分*=80万円(10割)
    7割にあたる56万円が各健康保険制度から給付。
    3割にあたる24万円が患者の一部負担金。
総医療費が100万円、うち先進医療に係る費用が20万円だったケースの例を図で表しています。先進医療部分の20万円は全額自己負担です。保険給付分は80万円です。そのうち、7割にあたる56万円が各健康保険制度から給付。3割にあたる24万円が患者の一部負担金です。 

出典:厚生労働省「先進医療の概要について」

こうした現実を踏まえ、多くの人が治療費や生活費の負担を軽くする目的で、がん保険の必要性を感じています。

がん保険に入るとどう安心?加入のベストタイミングとは

がん保険に入っておくと、もしものときに、治療開始時に必要な費用をすぐ確保できます。診断一時金を治療費だけでなく生活費にも充てられるので、気持ちにもゆとりが生まれ、安心して治療に向き合えます。
加入のタイミングは、元気で若いうちがベストです。年齢が上がると保険料も高くなり、健康診断で要注意項目が出ると加入しづらくなる場合もあります。ライフイベント(結婚、出産、住宅購入)を機に検討する方も多いです。また、がんの罹患率が上がる年齢を意識することも重要です。例えば、男性の場合50代以降で急増し、女性の場合、20代から徐々に増え始めるなど、男性と女性では、がんになりやすい年齢が異なります。

あなたにぴったりのがん保険は? 選び方のコツを知ろう

青いペンとチェックボックス 

がん保険を選ぶときに大切なのは、「自分に必要な保障内容を、無理のない保険料で確保すること」です。そのためには、保険のタイプや保障内容を理解し、自分のライフスタイルに合ったプランを見極める必要があります。

がん保険が必要か迷ったら。迷ったときの5つのチェックポイント

がん保険が自分に本当に必要なのか迷っている場合は、以下の観点から自分の状況を見つめ直してみましょう。加入の「必要性」や「タイミング」を判断するための材料になります。

  • 貯蓄で対応できるか
    治療費や生活費を貯蓄でまかなえるか確認。
  • 収入への影響は?
    休職や収入減でも生活が続けられるかを考慮。
  • 家族やライフステージ
    子育て中や住宅ローン返済中など、責任の大きさを見直す。
  • 加入中の保険で保障が十分か
    医療・生命保険に、がんに手厚い保障が含まれているかを確認。
  • 将来の加入リスク
    年齢や健康状態で加入できなくなる前に検討。

がん保険にはどんな種類がある?タイプ別の特徴を比較

がん保険に加入すると決めたら、どのタイプの保険が自分にとって必要な保障が受けられるかを確認しましょう。がん保険には以下のようなタイプがあります。

  • 診断一時金型:がんと診断された時点でまとまった金額が支給されるタイプ。治療費はもちろん、仕事を休むことによる収入減にも備えられます。
  • 入院・通院重視型:通院治療に対応した給付が充実しており、短期入院や外来治療が中心となる近年の医療事情に適しています。
  • 先進医療特約付き型:高額な先進医療費に備える特約付き。最先端の治療を受ける可能性がある方におすすめです。

これらのタイプを理解したうえで、複数の保険会社のプランを比較することが、自分に最適な保険を見つける第一歩です。

がん保険に関するよくある質問

聴診器を持つ医師とクエスチョンマーク 
Q1. 若いうちからがん保険に入るべきですか?
A.はい。若くて健康なほど保険料が割安で、審査も通りやすいので、早めの準備が安心です。とくに女性は、20代後半から子宮頸がん、30代から乳がんの罹患者が増え始めます。
Q2. 過去にがんを経験していても加入できますか?
A.過去にがんを経験した方は申し込める保険が限られており、一般的ながん保険は加入が難しい傾向にあります。
Q3. 医療保険に加入していれば、がん保険は必要ないのでしょうか?
A.医療保険だけでは治療中の収入減を補いきれないことがあります。がん保険で不足をカバーする必要があるか、チェックポイントで確認してみましょう。
Q4. がん保険は必ず必要ですか?
A.収入や貯蓄が十分にあり、治療中の生活費や治療の自己負担金をカバーできる人は、がん保険の必要性が低いでしょう。ただし、安定した収入や貯蓄の維持が不安な場合は、がん保険への加入を検討すると安心です。
Q5.がん保険を選ぶときに気をつけるポイントは?
A.必要な保障内容を絞り、無理のない保険料で選びましょう。定期的な見直しも忘れずに。

まとめ

がん保険が必要かどうかは、「がんにかかったとき、自分や家族の生活を守れるかどうか」で考えることが大切です。日本には高額療養費制度や傷病手当金などの公的制度が整っていますが、全ての費用をカバーできるわけではありません。
たとえば、先進医療の技術料は全額自己負担であり、差額ベッド代や交通費、付き添いの費用、治療中の生活費なども公的制度の対象外です。また、治療に専念するために休職や時短勤務を選択すると、収入が減少する可能性もあります。

こうした経済的な負担を軽減する手段として、がん保険があります。診断時にまとまった給付金を受け取れる「診断一時金型」や、通院治療に対応した「入院・通院重視型」、高額な先進医療に備える「先進医療特約付き型」など、自分のライフスタイルに合った保障を選べる点も特徴です。

特に、自営業やフリーランス、子育て世帯、住宅ローン返済中の方など、経済的責任が大きい人にとって、がん保険は安心材料となるでしょう。若く健康なうちに加入すれば、保険料も安く、審査も通りやすいのも利点です。貯蓄だけで十分か、収入減に耐えられるかなどを見直し、「もしも」のときに困らない体制を整えておくことが、後悔しない備えにつながります。

黒田尚子
監修 黒田尚子

1992年日本総合研究所に入社。在籍中にFP資格を取得し、1997年退社。1998年4月にファイナンシャルプランナーとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動や老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「就労リング」のファシリテーター、がんと暮らしを考える会のお金と仕事の相談員などに従事。2023年4月には、がん患者支援などを目的に患者家計サポート協会を設立し顧問を務める。近著は「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)

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