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医療保険とがん保険の違いとは?それぞれの特徴と使い分け方を解説

医療や保険に関する選択肢が増える中、「医療保険」と「がん保険」の違いに戸惑う方も少なくありません。保障内容を理解しないまま契約すると、「思っていた保障と違った」と後悔することもあります。
本記事では、それぞれの保険の特徴や違い、そして自分のライフスタイルに合った活用方法について分かりやすく解説します。

医療保険・がん保険 それぞれの保険の特徴

スマートフォンを操作する手 

がん保険と医療保険は、ともに治療費の自己負担に備えるものですが、それぞれの保険には大きな違いがあります。それぞれの保険の特徴を見ていきましょう。

医療保険の特徴

医療保険は、病気やけがにともなう入院や手術など、幅広い医療費に備える民間保険です。風邪や骨折、生活習慣病など、日常的に起こり得るリスクにも対応しており、基本的な保障として多くの人に利用されています。

主な特徴は、以下の通りです。

〈入院給付金〉
入院した日数に応じて、定額の給付金が支払われます。
〈入院一時金〉
入院日数に関係なく、入院すれば一定額の一時金が受け取れます。
〈手術給付金〉
手術を受けた場合、内容や種類に応じた金額が支給されます。
〈通院保障〉
入退院に連動する通院や、一定の条件を満たす通院治療に対しても保障が受けられます。
〈特約の追加〉
三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)や女性特有の疾患に備える特約など、個別のリスクに応じたカスタマイズが可能です。

保険料は年齢や健康状態で変わるため、ライフステージごとに見直しながら加入するのが基本です。

がん保険の特徴

がん保険は、その名の通り「がん」に特化した民間保険です。がんに関する治療費や療養中の負担に備えた設計となっており、以下のような特徴があります。

〈診断一時金〉
がんと確定診断された時点で、まとまった金額の給付金が支払われます。
〈治療保障〉
抗がん剤治療や放射線治療、がんの通院治療などに対応しています。
〈再発・転移への対応〉
がんが再発・転移した場合、一定の間隔(例:1年)を空ければ、診断一時金を複数回受け取れる仕組みがあります。
〈免責期間の設定〉
契約後すぐの保障を避けるため、一般的に90日程度の待機期間が設けられています。

がん治療は長期化や再発のリスクもあるため、治療継続や生活費の補填などに活用できる自由度の高い保障が特長です。

「医療保険」「がん保険」の特徴を比較すると以下のようになります。

「医療保険」「がん保険」の特徴を比較しています。医療保険の対象となる範囲は、病気やけが全般です。主な保障は、入院給付金、手術給付金、通院保障です。特徴は、日常的な医療リスクに対応していること、基本的な保障として広く使えること、長期入院よりも短期入院や通院を想定した設計が多いこと、三大疾病や女性疾病などの特約追加が可能であることです。がん保険の対象となる範囲はがんに限定されています。主な保障内容は、診断一時金、がん入院給付金、通院保障、再発や転移時の追加給付です。特徴はがんに特化して設計された専門保険であること、長期治療や再発リスクに備えやすいこと、免責期間があるので加入タイミングが重要であることです。 

費用やタイミングから見る違い

家計を管理する母 

保険料の違い

がん保険と医療保険は保障内容が異なるため、保険料にもそれぞれ特徴があります。

医療保険の保険料
医療保険は、病気やけがなど幅広いリスクに対応しているため、がん保険と比べると保険料がやや高めに設定されることが多いです。また、特約を追加して保障内容を充実させると、その分保険料も上がります。ご自身の家計状況と必要な保障内容のバランスを考慮して選ぶことが重要です。
がん保険の保険料
がん保険は、がんという特定の病気に備える保険であるため、医療保険よりも比較的保険料を抑えやすい傾向があります。特に若いうちに加入すると、より低い保険料で保障を受けられる場合があります。

加入と見直しの目安の違い

保険は、加入時期によって得られる保障や保険料が大きく変わることがあります。年齢や健康状態だけでなく、生活環境の変化にも着目して検討することが重要です。

医療保険の加入・見直しのタイミング
医療保険は健康状態によって加入できない場合があるため、体調に問題のないうちに検討しておきましょう。入院傾向や治療内容の変化にあわせて、通院保障や特約の見直しも定期的に行いましょう。
がん保険の加入・見直しのタイミング
がん保険は免責期間があるため、健康なうちの加入が基本です。再発や通院治療への備えが必要になったときは、給付回数や保障内容を見直しましょう。医療保険との重複にも注意が必要です。

それぞれの保険をどう使い分ける?

医療保険とがん保険は、どちらか一方だけでは補いきれない場面もあります。医療保険をベースにしながら、がんのリスクが気になる方はがん保険を追加するという形が、最も現実的な使い分けです。
たとえば、
「がんも含めた傷病による入院リスクには医療保険で対応」
「がん治療の長期化や高額負担にはがん保険で備える」
といった組み合わせがよく見られます。どちらか一方に決めるのではなく、自分の状況に合わせて無理なく必要な保険を組み合わせてみるのが良いでしょう。

ライフイベント別・医療保険とがん保険の選択ポイント

手をつないで歩く家族 

保険は、一度加入して終わりではありません。年齢や家族構成、働き方の変化に応じて、必要な保障も変わっていきます。今の自分にとって何が必要かを考えながら、定期的に見直していくことが、安心につながる保険選びの第一歩です。

社会人としてのスタート期(20〜30代)

まだ大きな病気のリスクは低めですが、将来に向けて基本的な保障を整えておくことが大切です。

  • 医療保険で、ケガや急な入院への備えを確保
  • がん保険は、特に遺伝性がんや家族性がんのリスクがある場合は前向きに検討
  • 就職・結婚・出産などライフイベントに応じて、見直ししやすい柔軟なプランを検討
  • 将来の保障拡充を見据えて、保険の「入り口」として活用

今は医療保険を中心に、がん保険は将来必要になるかどうかを見極めながら検討しましょう。

子育て・働き盛り世代(30〜50代)

家庭や収入を支える立場となり、万が一のリスクに備えた保障の充実が求められる時期です。

  • 医療保険で病気・ケガを幅広くカバー
  • がん保険で、高額な治療費や長期療養による家計の負担に備える
  • 治療保障や就業不能保障なども組み合わせ、働けなくなるリスクにも対応
  • 保険料の負担が家計を圧迫しないよう、必要な保障をバランスよく整備

医療保険とがん保険を「両輪」として活用し、保障の過不足がないよう定期的に見直しましょう。

シニア世代(60代以降)

健康リスクが高まる時期。現状の体調や医療環境に合わせて、保障の内容を見直すことが大切です。

  • がん保険や慢性疾患への備えを重視した保障設計を意識
  • 入院日数の短縮や通院治療の増加に対応した給付条件を確認
  • 医療保険も「今の体調」に合わせて、無駄なく適切な保障に調整
  • 加入済みの保険が生活に合っているか、定期的な確認とメンテナンスを忘れずに

がん保険と医療保険の両方に加入している場合は、重複や不足がないかをチェックし、必要に応じてスリム化や見直しをおすすめします。

まとめ

保険の選択肢は、一つではありません。がん保険と医療保険の違いを知ったうえで、自分や家族にとってどんな備えが必要かを見つめ直すことが何より大切です。今の健康状態や生活スタイル、将来に対する不安や期待は、人それぞれ異なります。だからこそ、情報に流されすぎず、「自分にとって本当に必要な保障とは何か」を軸に保険を考えることが求められます。

医療保険もがん保険も、いざというときの経済的な支えになりますが、その力を最大限に生かすには、タイミングと内容の見極めが欠かせません。過剰な備えで保険料が重荷になるよりも、今の暮らしにちょうどよくフィットするプランを選ぶことが、将来の安心につながります。保険会社によってはライフプランナーによる無料の相談サービスなどもありますので、上手に活用しましょう。

違いをしっかり理解し、自分に合った保険を無理なく整える。その一歩が、これからの生活を支える確かな安心になります。焦らず、比べながら、自分らしい選び方をしていきましょう。

黒田尚子
監修 黒田尚子

1992年日本総合研究所に入社。在籍中にFP資格を取得し、1997年退社。1998年4月にファイナンシャルプランナーとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動や老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「就労リング」のファシリテーター、がんと暮らしを考える会のお金と仕事の相談員などに従事。2023年4月には、がん患者支援などを目的に患者家計サポート協会を設立し顧問を務める。近著は「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)

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