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がん保険の診断給付金(一時金)とは?必要性や活用のポイントを解説

がんの告知を受けたとき、治療への不安と同じくらい心配になるのが経済面です。これからの治療費や生活費、収入の減少といった現実的な問題が一気に押し寄せてきます。 こうした不安を和らげてくれるのが、診断された時点でまとまったお金を受け取れる「診断給付金(一時金)」です。入院や治療の有無にかかわらず受け取れる場合が多く、初期の治療費や生活費、先進医療の費用など幅広く活用できます。 金額や受け取り回数、条件は保険商品によって異なるため、事前の比較検討が欠かせません。この一時金がどのような仕組みなのか、選び方や活用のポイントをお伝えします。

最初に知っておきたいがん保険の基礎知識

グラフの資料と虫眼鏡 

がん保険の仕組みと基本的な保障内容

がん保険の大きな特徴は、がんに特化した保障設計になっている点です。
診断された時点で一時金が支払われる商品が多く、受け取った資金は治療費や生活費、収入減の補填に使えます。最近多くみられる入院・通院・手術など何らかのがん治療をした場合に保障される治療給付金と合わせることで、外来中心のがん治療に対応することも可能です。
診断給付金の金額は幅広く設定できるものが多く、必要な保障額に合わせて選べます。

医療保険や三大疾病保障との違い

医療保険は入院や手術費用を幅広くカバーし、がん以外の病気やけがも対象です。一方、がん保険は「がん」に特化し、診断された時点で一時金を受け取れる商品がほとんどです。入院や治療方法に左右されず、がんによる経済的な負担を直接軽減できる点がメリットです。

がん以外の重篤な疾病にも備えたい場合は、医療保険に「三大疾病保障」を付帯するという選択肢もあります。「がん」に加えて「心疾患」「脳血管疾患」をカバーできるほか、商品によっては、三大疾病以外に糖尿病 · 高血圧性疾患 · 肝硬変などの生活習慣病に対する幅広い疾病リスクに対応できる場合もあります。がん保険はリスクが「がん」だけに限定されてしまうため、他の病気への備えも必要なら、医療保険との組み合わせを検討してみましょう。

関連記事:医療保険とがん保険の違いとは?それぞれの特徴と使い分け方を解説

診断給付金(一時金)とは?どんなときに受け取れる?

医師に相談する様子 

給付の条件と対象になるケース

診断給付金は、医師からがんと診断確定を受けた際にまとまった金額を受け取れる保障です。入院の有無に関わらず給付を受けられる商品が多く、治療方針が決まる前の段階で資金を確保できるので安心して治療が受けられます。

給付を受けるための主な条件は以下の通りです。

  • 診断条件:医師によるがんの診断確定(多くは診断書のみで可)
  • 対象範囲:悪性新生物が対象。上皮内新生物を含むあるいは対象となる範囲や保障額は商品により異なる
  • 免責期間:契約後90日間が一般的
  • 除外項目:良性腫瘍、大腸ポリープ(良性)は原則対象外

従来は一度きりの給付が一般的でした。しかし、最近は再発・転移時にも受け取れる商品が主流です。複数回保障されることにより、がん治療の長期化にも備えられるようになっています。ただし、中には「初回から2年経過後」「最大5回まで」といった条件がある商品もあります。商品によって、給付条件や受取間隔、支払回数上限が異なるため、加入前に比較検討しましょう。

一時金の役割と主な使い道

一時金は使途に制限がないため、がん治療で発生する様々な費用に柔軟に対応できます。治療費の自己負担分はもちろん、先進医療費、遠方の病院への交通費・宿泊費、家族の付き添い費用、日常生活費の補填に充てられます。自宅療養の環境整備や、治療中の心のゆとりを保つための資金としても活用できます。
また、一時金は、基本的にがんと診断あるいは2回目以降なら入院、手術、治療の継続など給付条件が比較的シンプルです。今のがん治療に対応できているか見極める必要がある治療給付金に比べて、細かな条件を気にせず受け取れます。

診断一時金の使い道と選び方

ブタの貯金箱と電卓 

治療初期や生活にかかるお金への備え

がんと告知されると、治療開始前から様々な出費が発生します。検査費用、入院準備、通院・入院の交通費、付き添い費用、差額ベッド代など、公的保険でカバーできない部分も少なくありません。場合によっては休職や時短勤務で収入が減ることもあり、家計への影響が長期化する可能性があります。
見落としがちなのが休職中の社会保険料や住民税の負担です。毎月の給与がなくても、退職しなければ、厚生年金保険料や健康保険料、介護保険料(40歳以上)を負担しなければなりません。また、住民税は、前年の所得に応じて負担する「後払いの税金」です。がんに罹患する前の前年の所得が高ければ、住民税もかなりの額になるはずです。
診断給付金は、こうした治療初期の経済的負担を軽減し、患者や家族が治療に専念できる環境づくりに役立ちます。

再発や転移に備えるなら、受け取り条件にも注目

がんは治療が終わっても再発や転移のリスクがあり、長期的な備えが必要な病気です。受け取れるのが1回限りの場合、再発時などに費用が不足する可能性があります。
そのため、給付条件や受取間隔、回数制限を事前に確認しておくことが大切です。再発時の資金確保の観点から検討する価値があります。

がん保険の診断給付金で確認しておきたいこと

スマホで検索する女性 

商品を選ぶときのチェックポイント

商品を選ぶ際の重要なポイントは以下の通りです。

  • 診断給付金の金額:多くの場合、50万円、100万円など給付金額の設定が可能
  • 診断給付金の受取回数:一回限り(シンプル・初期重視)か、複数回(再発対応・長期的安心)か
  • 支払条件:がんの診断確定のみか、入院・治療の開始などが必要か。初期のがん(上皮内新生物)も保障対象に含むか
  • 免責期間:契約後、保障対象外となるのは何日間か

診断給付金の受取回数が一回限りの場合は、設計が分かりやすく保険料を抑えられます。 複数回の場合は再発・転移時にも対応できます。給付条件や受け取りの間隔、支払回数上限などを確認しましょう。

診断給付金と治療給付金の組み合わせ方

診断給付金は治療初期の入院費や生活費を補い、治療給付金は通院や入院など継続的な治療費を補う、という役割があり、それぞれのタイミングで、経済的な負担を和らげることができます。加入時はそれぞれの条件や金額、支払回数上限などを確かめ、自分や家族に合った組み合わせを選んでみましょう。

まとめ

がん保険の診断給付金(一時金)は、がんと診断された時点でまとまった資金を受け取れる保障です。治療費や生活費に自由に使えるため、初期の費用や収入減に備えるうえで役立ちます。

保障内容を選ぶときは、金額や支払回数などの条件を比べて、自分や家族に合うプランを検討しましょう。年齢や家族の状況、医療の進歩によって必要な保障は変わるため、定期的に見直すことも大切です。見直しの際は、保険会社の案内や相談サービスなどを活用し、自分が安心できる内容に整えておきましょう。

黒田尚子
監修 黒田尚子

1992年日本総合研究所に入社。在籍中にFP資格を取得し、1997年退社。1998年4月にファイナンシャルプランナーとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動や老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「就労リング」のファシリテーター、がんと暮らしを考える会のお金と仕事の相談員などに従事。2023年4月には、がん患者支援などを目的に患者家計サポート協会を設立し顧問を務める。近著は「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)

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