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女性のためのがん保険選びガイド|おすすめの保障と検討ポイント

がんは日本人の主要な死因のひとつで、全死亡の約4分の1を占めています。※ 特に女性は乳がんや子宮がん、卵巣がんなど特有のリスクがあり、ライフイベントによる影響も受けやすいとされています。 本記事では、女性におすすめしたいがん保険の保障内容や選び方のポイントを整理して解説します。
ライフステージに応じた最適な備え方を理解し、自分に合った保険選びにお役立てください。
※出典:厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況」

女性が直面しやすいがんのリスクとは?

会議で発言する女性

近年、がんは女性にとって身近な病気となっています。特に注目されるのが主に女性に多い乳がん、子宮がん・卵巣がんといった女性特有のがんです。これらは30代後半から40代といった働き盛りの年代でも発症例が見られ、共働き世帯が多い昨今では、家計や生活への影響が無視できません。

女性特有のがんは、妊娠・出産・子育て・仕事など、女性が家庭や社会で活躍する時期に発症しやすいため、精神的にも経済的にも大きな負担となります。医療費だけでなく、通院と仕事の両立や休職による収入減少、家事や育児のアウトソーシング費用などが生活に直結しがちですので、早めの対策や準備が欠かせません。

乳がん・子宮頸がん・卵巣がんなど女性特有のがん

厚生労働省の統計によると、乳がんは日本人女性が最も多く罹患するがんで、特に40代後半と70代前半に発症のピークがあります。子宮がんの一つである子宮頸がんは50代後半で罹患者数が最も多く、比較的若い世代から注意が必要です。※
そして、子宮体がんや卵巣がんは年齢を重ねるほどリスクが高まる傾向があり、いずれも治療が長期に渡れば生活に影響を及ぼします。早めにリスクを把握し、備えておくことが大切です。

  • 出典:厚生労働省「令和3年全国がん登録 罹患数・率 報告」

働く世代に増える女性のがん

女性のがん罹患者数は30代から増加傾向にあり、50代までは女性の方が、がん罹患数が多くなっています。※
この年代は社会での活躍や子育てなどの責任が重なり、がんになった時の治療による収入減少や、生活費への影響が特に大きい時期です。教育費や住宅ローンといった長期的な家計支出と並行して、医療費への備えも必要になります。

  • 出典:厚生労働省「令和3年全国がん登録 罹患数・率 報告」

早期発見でも、治療費は想像以上にかかる

がんは、早期発見・適切な治療によって、再発リスクが抑えられ、結果的に身体的・経済的な負担も軽減されます。とはいえ、がんの種類や進行度、治療への考え方・価値観によって、かかる費用はケースバイケースです。検査・手術・薬物療法・放射線治療など公的医療保険が適用になる場合、高額療養費制度で一定額以上は軽減されますが、入院時の差額ベッド代や食費、通院のための交通費などは全額自己負担となります。
先進医療や自由診療を選択する場合は、さらに高額な費用が発生します。もちろん、治療中も住居費や生活費は必要です。貯蓄のみでの対応には限界があるかもしれません。

費用やタイミングから見る違い

家計を管理する母 

保険料の違い

がん保険と医療保険は保障内容が異なるため、保険料にもそれぞれ特徴があります。

医療保険の保険料
医療保険は、病気やけがなど幅広いリスクに対応しているため、がん保険と比べると保険料がやや高めに設定されることが多いです。また、特約を追加して保障内容を充実させると、その分保険料も上がります。ご自身の家計状況と必要な保障内容のバランスを考慮して選ぶことが重要です。
がん保険の保険料
がん保険は、がんという特定の病気に備える保険であるため、医療保険よりも比較的保険料を抑えやすい傾向があります。特に若いうちに加入すると、より低い保険料で保障を受けられる場合があります。

加入と見直しの目安の違い

保険は、加入時期によって得られる保障や保険料が大きく変わることがあります。年齢や健康状態だけでなく、生活環境の変化にも着目して検討することが重要です。

医療保険の加入・見直しのタイミング
医療保険は健康状態によって加入できない場合があるため、体調に問題のないうちに検討しておきましょう。入院傾向や治療内容の変化にあわせて、通院保障や特約の見直しも定期的に行いましょう。
がん保険の加入・見直しのタイミング
がん保険は免責期間があるため、健康なうちの加入が基本です。再発や通院治療への備えが必要になったときは、給付回数や保障内容を見直しましょう。医療保険との重複にも注意が必要です。

女性ががん保険を選ぶときの検討ポイント

テーブルの上に置いてあるノートとスマホ 

がん保険選びでは、まず診断給付金を検討してみましょう。
診断給付金は、がんと診断されたときにまとまった金額を受け取れる保障で、使用用途も限定されていないため、治療費と生活費の両方に活用できるというメリットがあります。
とくに、女性の場合、家事や育児、介護を一手に担っている場合が少なくありません。がんに罹患した場合、これらをアウトソーシングできる代行費用に充当できれば心身の負担も軽減できるはずです。
そして、がんには再発や転移のリスクがあります。一回限りではなく複数回受け取れるか、一定の通院治療にも対応しているかなど、支払条件を十分に確認することが欠かせません。
さらに、治療後の生活サポートや緩和ケアまで視野に入れた保障選びができると、将来への備えとなります。

診断給付金の「2回目以降の支払い条件」に注目

がんは再発・転移したり、新たな部位で見つかったりする可能性もあり、診断給付金が2回目以降も支払われるかどうかが重要です。
支払い条件や回数上限、保障開始までの待機期間を必ず確認しておきましょう。特に乳がんのホルモン治療は5~10年など治療期間が長期にわたります。複数回受け取れる保障を選ぶと良いでしょう。

上皮内新生物まで保障されるか確認を

上皮内新生物とは、基底膜内にとどまり浸潤していない段階です。悪性新生物に比べて、再発・転移がなく、早期発見・治療で完治の可能性が高いと言われています。保険については、保障の対象外あるいは悪性新生物への保障と分けている商品などさまざまです。診断給付金や治療給付金の対象になるかどうかを確認しておきましょう。

保険料だけでなく「受け取りやすさ」にも注目

月々の保険料だけでなく、実際に給付金が受け取りやすいかどうかも重要な判断材料です。診断書のみで請求できるか、オンライン申請が可能か、手続きが簡易かどうかなど利便性を確認しておくと安心です。治療前・治療中は体力的にも精神的にも負担が大きいため、スムーズに給付金を受け取れる保険を選びましょう。

ライフステージ別・女性のためのがん保険活用術

ベランダで笑い合う女性2人 

人生の歩みとともに、がんのリスクや必要な保障は変化していきます。結婚や出産といった生活の変化に応じて、家族を支える保障が重要になります。年齢を重ねるごとにがんの罹患リスクは高まるため、保障を強化する必要がないか見直すことも重要です。ここでは、女性の年代・ライフステージ別に、がん保険の備え方をご紹介します。ぜひご検討の参考にしてください。

20〜30代前半|早めの加入で無理なく備える

この時期は保険料が比較的低く、健康状態による制約も少ないため選択肢が広がります。乳がんや子宮頸がんは30代からリスクが高まり始めるため、早めの備えが効果的です。なお、原則として、がん保険は一度がんに罹患すると加入することはできません。
掛け捨て型や女性特有の病気に手厚い特約付きのプランなど、シンプルで負担が少ない保障であれば、継続しやすく、見直しも柔軟にできておすすめです。

30代後半〜50代|子育てや仕事を考えた保障設計

家庭でも社会でも責任が重なるこの世代では、がんによる生活への影響が大きくなります。入院や手術だけでなく、長期にわたる通院治療にも対応できる保障を備えておくと安心です。
診断給付金は、医療費だけでなく教育費や住宅ローンなどの生活費にも活用でき、家計を支える助けになります。治療給付金特約などを組み合わせつつ、保険料とのバランスを考えて設計することが大切です。
治療の選択肢の幅を広げたい場合は、先進医療や患者申出療養、自由診療など保険外診療をカバーできる特約も検討しても良いでしょう。

60代以降|罹患リスクに備えて保障を見直すタイミング

がんは加齢とともに罹患リスクが高まる病気です。将来的にがんにかかるリスクは少なくありません。預貯金などこれまでの準備状況に応じて、60代以降は保障内容や給付金額を見直すなど、がんに対する備えを強化すべき年代といえるでしょう。
また、本格的な年金生活に入れば、収入が限られてきます。がん罹患後に保険料の支払いが免除される保険料免除特約をつけておくと安心です。
年金収入や保険料負担を調整しつつ、診断給付金が複数回受け取れる契約内容かどうかなど条件を確認し、保障を見直してみましょう。

まとめ

がんは誰にとっても身近なリスクであり、特に女性はライフステージによってその影響が大きく変わります。治療費や生活費の負担、仕事や家庭への影響を踏まえると、経済的な備えは欠かせません。

大切なのは「今の自分に合った保障」を持ち続けることです。年齢や家族構成、働き方が変わるたびに見直しを行い、自分の価値観や生活スタイルに合った保険を選ぶことが、将来への備えを支える基盤となります。
また、がん保険は、今の医療の進歩や公的制度(高額療養費等)の改正などに対応できているかも重要です。保障の「最適化」のためにも、定期的に保障の内容をチェックする習慣をつけておきましょう。

黒田尚子
監修 黒田尚子

1992年日本総合研究所に入社。在籍中にFP資格を取得し、1997年退社。1998年4月にファイナンシャルプランナーとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動や老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「就労リング」のファシリテーター、がんと暮らしを考える会のお金と仕事の相談員などに従事。2023年4月には、がん患者支援などを目的に患者家計サポート協会を設立し顧問を務める。近著は「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)

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