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がん保険の終身型と定期型はどちらを選ぶべき?それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説!

「がん保険」という言葉は聞いたことがあるものの、「終身型」と「定期型」の違いについては、名称だけでは分かりにくく、自分にはどちらが適しているのか悩む人も多いでしょう。
厚生労働省の統計によれば、がんの罹患率は年齢とともに上昇し、65歳以降で特に高まります。※
こうした背景から、がん保険を選ぶ際には「保障期間」「支払総額」「解約時の扱い」といった条件をしっかりと理解することが重要です。
本記事では、終身型と定期型の特徴やメリット・デメリットを整理し、ライフステージに応じた選び方を解説します。
※出典:厚生労働省「令和3年全国がん登録 罹患数・率 報告」

終身型と定期型のがん保険、どう違う?

頭を抱えて悩む女性 

がん保険は大きく「終身型」と「定期型」に分けられます。この二つは保障期間の長さや保険料の仕組みに明確な違いがあります。

終身型は、一度加入すれば一生涯にわたって保障が続くタイプです。契約時の年齢で保険料が決まり、その金額を払い続ける限り保障は途切れません。老後の医療リスクにも対応できるため、「生涯を通じて安心を確保したい」と考える人に向いています。ただし保障が一生涯続く分、定期型と比較すると保険料の負担が大きくなります。

一方、定期型は「10年」「20年」といった契約期間が決まっており、満期を迎えると更新する仕組みです。若い時期には保険料が安く、必要な期間だけ効率的に保障を準備できるのが特徴です。ただし更新時には年齢に応じて保険料が上がるため、長期的に続けると負担が重くなる点に注意が必要です。

終身型と定期型、備えられる期間の違い

終身型は契約時点から解約しない限り、生涯にわたって保障が続きます。高齢期にがんが見つかった場合でも給付を受けられる点は大きな安心材料です。
定期型はあらかじめ定められた期間だけの保障となります。例えば「子どもの独立まで」や「住宅ローン完済まで」といった、ライフイベントに合わせた期間限定の備えに適しています。更新を重ねれば保障を延長できますが、そのたびに保険料は上昇します。

保険料の決まり方と支払いの総額

終身型は契約時の年齢と健康状態で保険料が固定され、その後は一生変わりません。若いうちに加入すれば長期的に総額を抑えられる可能性がありますが、加入時期が遅れると毎月の保険料が高くなる点には注意が必要です。

定期型は契約時点の年齢を基準に保険料が算出され、更新時にはその時点の年齢に応じた保険料になるため、加齢とともに保険料が増えていきます。若い時期は割安ですが、年齢が高くなるにつれて負担が大きくなるのが一般的です。

解約返戻金がある場合の特徴

現在のがん保険はほとんどが「掛け捨て型」と呼ばれ、解約返戻金がないか、あってもごくわずかです。一部の保険商品で、終身型の中には「貯蓄型」と呼ばれる解約返戻金付の商品があります。
これは、契約途中で解約した場合に払い込んだ保険料の一部が戻る仕組みです。もっとも、保険の本質はあくまで「保障」であり、貯蓄を目的とするものではありません。がんの罹患率は年齢とともに上昇することから、がん保険は健康なうちに加入し、その後できるだけ長期間加入し続けると安心です。
そのため、「解約する可能性があるのか」「万が一やむを得ず途中で解約する事態に備えておくか」を考えて選ぶことが大切です。解約返戻金がない掛け捨てタイプと比べて保険料が高く設定されている分、純粋に保障だけを求めるなら割高に感じられるでしょう。逆に、将来途中で解約するかもしれない人にとっては、一定の安心材料となり得ます。

なお、最近のがん保険の中には、満期や所定の期間までにがんに罹患しなかった場合など、保険料総額を全額(または一部)が健康還付給付金として戻ってくるリターン型の商品もあります。
これも貯蓄型の一つですが、解約返戻金があるタイプと同じく保険料は割高です。保障重視であれば、掛け捨て型の方が効率的に備えられるでしょう。

終身型のがん保険が向いているのはこんな人

会話する女性と高齢女性 

将来まで安心できる保障がほしい人

高齢期になるとがんを含む病気のリスクが高まり、退職後は収入が限られるため医療費の負担が暮らしに直結します。終身型は一度加入すれば保障が一生続くため、老後に診断を受けても経済的な備えを確保できます。さらに医療の進歩により治療は長期化・多様化しているため、継続的な保障を持てる終身型は安心につながります。 そのため、「生涯にわたって安心できる備えを重視したい」という方には特に向いています。

早めに入ることで保険料が抑えられる理由

終身型の保険料は契約時の年齢と健康状態で決まり、その後は基本的に変わりません。がんは加齢にともなって罹患率が上昇します。リスクが低い若いうちに加入すれば安い保険料で加入できるため、長期的に総支払額を抑えられます。逆に加入を先延ばしにすると毎月の保険料負担は大きくなり、健康状態によっては希望するがん保険や保障に加入できない場合もあります。若いうちからがん保険への加入を検討するのも一手です。

定期型のがん保険が向いているのはこんな人

ストレッチする父と子 

できるだけ保険料を抑えたい人

定期型は終身型と比べて、同じ保障内容であれば保険料は低くなります。20代や30代の若い世代でがんのリスクが相対的に低い時期には、保険料の負担を抑えながら、必要最低限の保障を備えられます。子どもの教育費や住宅ローンといった大きな支出があるご家庭の場合、無理のない範囲で手厚い保障を確保できる点は魅力です。
そのため、とくに、「今はできるだけ保険料を抑えたい」「将来ゆとりができたら見直したい」とお考えの方には向いているでしょう。

一定期間だけ保障を備えたい人

子どもが独立するまでの期間や住宅ローン返済が続く時期など、「特定のタイミングだけ保障を厚くしたい」という場合には定期型が向いています。契約満了後は更新せずに終了することもできて、無駄のない保険設計が可能です。

更新のタイミングで保障内容を柔軟に変えたい人

定期型の強みは更新時が保障内容を見直すタイミングになるという点です。結婚や出産、住宅購入といったライフイベントやライフステージの変化、自身の健康状態、収入の増減、医療技術の進歩などに応じて保障を増減できます。ただし、健康状態が悪化していると更新条件が制限される場合もあるため、見直しの柔軟性とリスクの両面を理解しておくことが大切です。
もちろん、終身型のがん保険も保障の見直しはできるものの、とくに、「将来の変化に合わせて保障を調整するタイミングを設けておきたい」とお考えの方には向いているでしょう。

終身型と定期型のがん保険、どちらを選ぶか迷ったら

電卓で計算する女性 

保障をいつからいつまで備えたいかを考える

がん保険の選び方で重要なのは、「どの時期に、どれだけの保障が必要か」 を考えることです。子どもの独立までで十分と考える人もいれば、老後まで見据えて一生涯の備えを望む人もいます。高齢期にがんになるリスクが高まる点を踏まえると、終身型は長期的な安心を求める場合に、定期型は一定期間の保障に重点を置きたい場合に適しています。

捻出できる保険料を算出する

保険料の支払いは長期にわたるため、無理のない設計が欠かせません。将来にわたり必要な保障の検討とともに、例えば、月払いの保険であれば、家計に対して毎月の保険料負担がどのくらいか確認することが重要です。

家族やご自身のがんリスクを踏まえて検討する

がんのリスクは年齢だけでなく、家族の病歴や生活習慣によっても高くなることがあります。親族にがん経験者が多い場合や、喫煙・飲酒等の生活習慣がある場合は、がんを発症する可能性を意識して早めに備えることが大切です。
さらに、自分が治療を受けることになったときに家族にどのような影響があるかを考え、必要な保障の期間や金額を具体的にイメージしておくと安心です。

終身型と定期型を組み合わせる選び方もある

「終身型」と「定期型」を組み合わせて利用する方法もあります。終身型は、若いうちに加入すると保険料が低く設定されるため、その後も安定した負担で支払いを続けられます。一方、定期型は子育てや住宅ローンの返済など、出費が多い時期に保障を手厚くするのに役立ちます。
この二つを組み合わせれば、生涯にわたり一定の保障を備えつつ、必要な時期には保障を増やすことができます。ライフステージに合わせて調整できるため、安心と柔軟さの両立につながります。

まとめ

がん保険を選ぶときに大切なのは、目先の保険料だけでなく、将来の生活において必要になる保障や家計全体のバランスを見据えることです。自分や家族のライフステージに合わせて、無理のない形で安心を備えることが、将来にわたって納得できる選択につながるでしょう。

黒田尚子
監修 黒田尚子

1992年日本総合研究所に入社。在籍中にFP資格を取得し、1997年退社。1998年4月にファイナンシャルプランナーとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動や老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「就労リング」のファシリテーター、がんと暮らしを考える会のお金と仕事の相談員などに従事。2023年4月には、がん患者支援などを目的に患者家計サポート協会を設立し顧問を務める。近著は「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)

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