読了目安:6分

がん保険で自由診療に備えるには?選ぶべき保障内容のポイントとは

「もし大切な人が“がん”と診断されたら、どんな治療を選びたいですか?」

この問いに、多くの人は「自分が希望する治療を受けさせたい」と答えるでしょう。近年、国内外で次々と新しい治療法が登場し、保険適用外の自由診療を選択肢に入れる人も少なくありません。しかし自由診療は公的医療保険の適用対象外で、費用は全額自己負担となり、数百万円規模の費用が必要になるケースもあります。

その治療費用に備える方法として注目されているのががん保険です。従来型の入院・手術の保障に加え、自由診療や先進医療に対応できる特約、診断給付金(一時金)の保障など、新しいタイプの商品も増えてきました。選び方次第で将来の安心度は大きく変わります。
本記事では、自由診療の実態と費用、最新のがん保険事情までを整理し、最適な備え方をわかりやすく解説します。

がんの自由診療とは?がん保険はどう備える?

注射と錠剤 

自由診療とは、公的医療保険が適用されない診療のことを指します。厚生労働省によれば、保険診療と自由診療を同時に行う「混合診療」は原則認められておらず、自由診療を選択した場合は、その治療にかかる費用をすべて自己負担しなければなりません。

こうした費用は一般的な保険診療よりも高額になりがちで、選択する治療方法によっては家計に大きな影響を与えます。そのため、万が一がんになった場合、自由診療も含めて治療方法を選択したいという人は、がん保険による備えが重要です。最近では「先進医療特約」「自由診療対応特約」など、公的医療保険でカバーされない治療費をサポートできる保険商品も増えてきました。

医療技術は進歩し続けており、万が一がんになった場合、自由診療は選択肢の一つとなる可能性があります。だからこそ、保障範囲を確認し、自分や家族の経済状況・治療方針に合わせて保険を検討することが大切です。

自由診療になる治療とはどんなもの?

具体的に自由診療に該当するのは、国内未承認の新薬投与や適応外薬、免疫療法、先進医療の一部、がんゲノム医療などです。中でもがんゲノム医療は、一人一人のがん異常遺伝子に基づいて治療などを行うオーダーメイドの医療です。日本では、2019年6月にがん遺伝子パネル検査が公的医療保険の対象になりました。しかし、保険適用の対象となるのは「標準治療が終了、または標準治療が存在しない固形がん患者」に限定されています。また、検査後の治療に関しても、保険適用外の扱いになる可能性もあり、その場合は数百万円単位の費用が必要になることもあります。

関連記事:がん保険のおすすめは?年代・家族構成で変わる賢い選び方

また、海外で承認されている治療を国内で希望する場合や、一般的に推奨される治療では十分な効果が得られないときに選ばれる治療も自由診療に含まれます。

こうした治療は選択肢を広げる一方で、経済的な負担が大きい点が特徴です。
そのため、どの治療を希望するかを事前に家族や医師と話し合い、希望する治療を選択できるよう、費用に備える手段を考えておくことが欠かせません。

自由診療に備えるなら、保険の役割も知っておこう

従来のがん保険は、公的医療保険でカバーされる治療を補う仕組みが一般的でした。しかし最近では、自由診療にも対応できる保障が登場しています。診断確定時に給付金を受け取れる診断給付金や、自由診療を受けた際に利用額に応じて給付される保障など、多様な商品が揃いつつあります。

ただし、自由診療といっても、治療を受ける対象となる医療機関が指定されているなど、科学的根拠(エビデンス)に基づいた治療が前提です。
保険診療に限らず、将来の治療の選択肢の幅を広げたい場合、がん保険の検討時には「自由診療にどこまで対応しているか」を確認しましょう。医療の進歩に伴い保険商品も進化しているため、保険に加入したから安心と思わず、定期的な見直しができると安心です。

がん保険の保障内容、どう選ぶ? 比較で見落としたくないポイント

チェックリストのイラスト 

がん保険は商品数が多く、比較検討をする保障内容も複雑です。選ぶ際には、自由診療対応の有無・給付内容の実用性・保険料とのバランスなどを比較検討することが欠かせません。

自由診療に対応している保障かをチェック

自由診療に対応しているかどうかは、確認すべきポイントの一つです。ただし「自由診療対応」と書かれていても、対象が一部の治療や薬剤に限定されている場合があります。希望する治療が保障範囲に含まれているかを必ず確認しましょう。

治療費に幅広く使える診断給付金(一時金)に注目

診断給付金は、がんと診断確定された時にまとまった金額を受け取れる保障です。入院や手術に限定されず、薬代・交通費・差額ベッド代、さらには収入が減った際の生活費の補填まで、幅広く自由に使えるのがメリットです。近年は診断給付金を1回限りではなく複数回受け取れるなど、長期的な治療や再発・転移に備えられるようになっている保険もあり、経済的な不安を大幅に軽減できます。

通院・外来でも使える治療給付金の保障があると安心

がん治療は入院よりも通院・外来での継続治療が主流になりつつあります。その際、抗がん剤や放射線治療、検査費用、交通費などの自己負担となる費用が発生します。「治療給付金」と呼ばれる、入院・通院・手術など何らかのがん治療を行った場合に給付金が受けられるものもあります。こうした保障で、長期にわたる継続的な治療にも合理的に備えられて安心です。

最後にもう一度確認したい、保険料と保障のバランス

がん保険は長期契約が前提となるため、無理なく支払いができる保険料と必要な保障のバランスが欠かせません。保険料の安さを重視して保障を絞り過ぎると必要な時に十分な保障を得られず、逆に手厚すぎると保険料の負担が重くなります。自分のライフプランを踏まえ、「続けやすさ」と「妥協しない保障」のバランスを確認しましょう。

まとめ

自由診療の広がりにより、がん治療の選択肢は大きく増えました。しかし同時に、治療費が高額になり、経済的負担が重くなるリスクも高まっています。

その備えとして有効なのが、自由診療に対応したがん保険です。まとまったお金を受けとれる診断給付金や継続的な治療を支える治療給付金、その他柔軟な特約を活用すれば、公的医療保険ではまかなえない費用を補い、治療の選択肢を広げられます。

ただし、必要な保障や保険料とのバランスは人それぞれ異なります。保障範囲・給付条件・特約内容を丁寧に比較し、自分と家族のライフプランに合った保険を選ぶことが、後悔しない選択につながります。

自由診療という選択肢を安心して取り入れるためにも、今のうちにがん保険を見直し、「納得できる保障」で未来に備えましょう。

黒田尚子
監修 黒田尚子

1992年日本総合研究所に入社。在籍中にFP資格を取得し、1997年退社。1998年4月にファイナンシャルプランナーとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動や老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「就労リング」のファシリテーター、がんと暮らしを考える会のお金と仕事の相談員などに従事。2023年4月には、がん患者支援などを目的に患者家計サポート協会を設立し顧問を務める。近著は「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)

公式SNSアカウント一覧

  • YouTube
  • X
  • LINE