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生命保険と税金の関係とは?生命保険料控除の仕組みをかんたんに解説!

生命保険料控除は、生命保険に加入している方が利用できる重要な制度です。
年末になると、生命保険会社から「生命保険料控除証明書」という書類が届きます。これは、生命保険料控除を利用するために必要なものです。支払った生命保険料の一部を税金の計算から差し引ける仕組みで、所得税・住民税の負担が軽くなります。

ただし、控除には種類や上限があり、旧制度と新制度でルールも異なります。正しく理解していないと、本来の控除を受けられない場合もあります。ここからは、生命保険料控除の仕組みや計算方法、申請のときの注意点を順に確認していきましょう。

生命保険料控除とは?仕組みと目的を知ろう

生命保険料控除は、生命保険に加入している人の税負担を軽くする所得控除制度です。

生命保険料が所得控除に使える仕組み

この制度では、支払った生命保険料の一部を課税所得(税金の計算のもとになる所得額)から差し引くことができます。課税所得が少なくなると、結果として所得税や住民税の負担が軽くなります。

  • 出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

控除できる対象と3つの種類(一般・介護医療・個人年金)

現在の生命保険料控除(2012年以降の新制度)は、次の3つに分けられています。

  • 一般生命保険料控除:死亡保障や貯蓄を目的とした生命保険
  • 介護医療保険料控除:入院や医療、介護に備える保険
  • 個人年金保険料控除:老後に年金形式で資金を受け取る契約

申告の際には、控除証明書に記載された区分をもとに正しく記入する必要があります。

生命保険料控除の控除額はいくらまで?計算方法と上限

パソコンを見ながら考える男性 

2012年1月以降に契約した生命保険の場合、所得税の控除額は「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つの区分ごとに最大4万円、合計で12万円が限度となります。
住民税については、それぞれの区分で最大2万8,000円、合計7万円までと定められています。

  • 出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

たとえば、年間に数十万円の生命保険料を支払っていたとしても、控除として差し引けるのは上限額までに限られます。複数の契約をしている場合も、区分ごとの合計が上限を超えることはありません。そのため、自分の契約状況を確認し、どの程度の控除が受けられるのかを正確に把握しておくことが大切です。

旧制度と新制度の違い(2011年の税制改正)

2010年度 の税制改正により、生命保険料控除の制度内容が変わりました。

旧制度(契約日が2011年12月31日まで):
「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」の2区分で、合計最大10万円まで控除

新制度(契約日が2012年1月1日から~):
「介護医療保険料控除」が新設され3区分となり、合計最大12万円まで控除

年末調整や確定申告を行う時期が2012年以降であっても、2011年以前に契約した保険については旧制度のまま扱われます。同じ人が複数の契約を持っている場合は、契約日や内容ごとにどちらの制度が適用されるかを確認する必要があります。

控除額の早見表と計算例

新制度では、「一般」「介護医療」「個人年金」の各区分で年間最大4万円、合計で最大12万円が所得控除の対象です。生命保険料控除は、1年間に支払った生命保険料の合計金額に応じて、控除額が計算されます。

例:年間で6万円の生命保険料を支払った場合(新制度)
→ 60,000円 × 1/4 + 20,000円 = 35,000円が控除額になります。
※年間保険料の合計金額に応じて計算式は異なります。

複数の区分に該当している場合は、それぞれの計算式で算出した控除額を合算し、合計12万円を超えない範囲で適用されます。控除証明書や早見表を活用すれば、自分の控除額を簡単に確認することができ、年末調整や確定申告の手続きがスムーズになります。

複数契約がある場合の取り扱い

複数の生命保険で保険に加入している場合、契約ごとに控除証明書が発行されます。しかし、税金の計算では契約ごとではなく、区分ごとに合算して扱われます。

例:2つの会社で、医療保険にそれぞれ1件ずつ加入し、年間で合計10万円の生命保険料を支払っていても、介護医療保険料控除として差し引けるのは最大4万円までです。

生命保険料控除の申請手続きと注意点

ノートとカレンダー 

年末調整と確定申告のどちらで申告するか?

生命保険料控除の申請方法は、働き方によって異なります。

会社員などの給与所得者
一般的には勤務先の年末調整で申告します。配布される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、控除証明書を添えて提出します。
ただし、年収が2,000万円を超える人、転職や退職で年末調整を受けられなかった人、副業収入がある人などは、確定申告での対応が必要です。

自営業やフリーランス
確定申告で申告します。確定申告書に記入し、控除証明書(紙または電子データ)を添付して提出します。

もし証明書(紙・電子のどちらでも)が提出されていなかった場合、その分の控除は適用されません。ただし、会社員であれば勤務先に相談して再提出できる場合があり、自営業やフリーランスは確定申告の際に修正や追加が可能です。証明書を紛失しても保険会社から再発行できるので、気づいた段階で早めに対応することが大切です。

  • 出典:国税庁「確定申告書等作成コーナー」

控除証明書の提出方法と期限

生命保険料控除を受けるには、控除証明書を期限内に提出する必要があります。

会社員
毎年10月~11月頃に届く証明書を年末調整の申告書に添えて勤務先へ提出します。提出期限は勤務先ごとに異なるため、必ず案内を確認して早めに対応することが大切です。

自営業やフリーランス
翌年2月中旬から3月中旬の確定申告期間に、確定申告書とともに税務署へ提出します。

控除証明書がなければ制度は適用されません。受け取ったら提出期限を確認し、大切に保管しておくことが必要です。

申請ミスや紛失時の対応策とは?

生命保険料控除の申請では、記入漏れや証明書の添付忘れなどが起こることがあります。誤りに気づいた場合は、会社員であれば勤務先に相談して再提出できる場合があります。自営業者やフリーランスは、確定申告の際に修正が可能です。

証明書を紛失した場合でも、保険会社に依頼すれば再発行が可能です。重要なのは、誤りや紛失に気づいた段階で早めに対応することです。

まとめ

生命保険で支払った保険料の一部は控除対象となり、税負担を軽減することができます。制度の仕組みや上限額を理解し、正しく申告することで控除を受けることができますので、毎年忘れずに申告しましょう。

黒田尚子
監修 黒田尚子

1992年日本総合研究所に入社。在籍中にFP資格を取得し、1997年退社。1998年4月にファイナンシャルプランナーとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動や老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「就労リング」のファシリテーター、がんと暮らしを考える会のお金と仕事の相談員などに従事。2023年4月には、がん患者支援などを目的に患者家計サポート協会を設立し顧問を務める。近著は「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)

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