読了目安:6分

がん保険に免責期間はなぜある?仕組みと注意点をわかりやすく解説

がん保険を検討するとき、意外と見落とされがちなのが「免責期間」です。免責期間とは、契約から一定の期間(一般的に90日間)は、がんと診断されても保険金や給付金が支払われない仕組みのことです。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、制度を公平に維持するために欠かせないルールです。

この仕組みを理解していないと、「いざというときに保障が受けられない」という思わぬ落とし穴に陥ることもあります。本記事では、免責期間の基本から、なぜ必要なのか、そして契約前に必ず押さえておきたい注意点までをわかりやすく解説します。

がん保険の「免責期間」とは?

万が一の時のためにがん保険を検討している方が気にすべきポイントのひとつが、「免責期間」です。
免責期間とは、がん保険に加入してから一定期間は、がんと診断されても保険金や給付金が支払われない期間を指します。一般的には、加入日から90日間が免責期間として設けられることが多いです。この期間中にがんと診断された場合、保険金や給付金の支払い対象外となるため注意が必要です。

免責期間が必要な理由

カレンダーの日付に丸を付けるボールペン 

ではなぜ免責期間が設けられているのでしょうか。
理由は、保険の加入者の公平性を守るためです。がん保険の免責期間は、決して加入者を不利にするためのものではなく、保険制度を公平かつ健全に運営するために欠かせない制度です。
また、保険加入直前にすでにがんを発症していたり、初期症状が見られたりする場合のリスクを防ぐ側面もあります。

保険は、まだ発生していないリスクに備えるための仕組みであり、確定した事実に対して給付するものではありません。そのため、保険会社は契約者同士の公平性を守り、保険料を適正に運用するために免責期間を設けています。全ての加入者が安心して利用できるように、一定の待機期間を設けることが必要とされているのです。

例えば契約前から医療機関で検査を受けていて、がんの疑いがあった場合や、自覚症状があった状態で申し込んだ場合などに、免責期間があることで不正な加入を防ぐことができます。

もし免責期間がなければ、すでにがんの兆候を感じてから慌てて保険に入り、直後に多額の給付金を受け取るといった「モラルリスク」が発生する可能性があります。
こうした行為は、他の加入者が支払った保険料で不正に恩恵を受けることになり、制度そのものの信頼を損ない、公平な保険制度の仕組みを揺るがしかねません。

このような事態を防ぐために設定されているのが「免責期間」です。契約してから一定期間(一般的に90日間)は、がんと診断されても保険金が支払われないというルールによって、モラルリスクを抑制しています。

がん保険は“思い立ったその日”にすぐ保障が始まるわけではありません。将来に備えるなら早めの加入が肝心です。
実際の免責期間の日数や条件は保険会社ごとに異なる場合もあるため、契約前にしっかりと約款を確認しておくことが大切です。がん保険の安心を最大限に得るためには、免責期間を理解し、適切なタイミングで準備を始めることが重要です。

免責期間中の取扱いとがん保険加入のタイミング

窓の外を眺める女性 

万が一、免責期間にがんと診断確定されたら

がん保険の場合、免責期間にがんと診断されても保険金や給付金は支払われません。また、保障の開始前にがんと診断確定されていた場合は、保険の契約者または保険の対象となる被保険者がその事実を知っている・いないにかかわらず、保険契約は無効となるのが一般的です。

免責期間中の保険料の支払い

免責期間中にがんと診断されても保障されないという点は、保険会社に関わらず共通しています。一般的には免責期間中も、保険料の支払いが必要になります。

ただし、保険会社によって免責期間中は保険料が発生しない商品もあります。がん保険を検討する際に、免責期間中の保険料の支払いも条件として比較しましょう。

健康なうちにがん保険に加入するメリット

健康なうちにがん保険へ加入しておけば、免責期間を無事に過ごせる可能性が高いと言えます。また、若くて持病のないうちに契約すれば、保険料は割安になり、保障内容の選択肢も広がります。

がんは部位によって初期症状がほとんどなく、気づいたときには進行しているケースも珍しくありません。「まだ若いから大丈夫」と思わず、健康な今だからこそ行動することが、将来の安心につながります。

もし不運にも免責期間中にがんが見つかった場合、初期治療費や入院費など全て自分で負担しなければなりません。この免責期間は「すでに症状が潜んでいた場合の不正請求」などを防ぐ目的で設けられているため、どの保険会社もほぼ例外なく設定しています。

加入時に健康そのものだと思っていても、数週間や1、2カ月のうちにがんと判明するケースもゼロではありません。だからこそ「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、早めの検討が重要なのです。

まとめ

ここまでがん保険の免責期間について解説してきました。この“保障の空白期間”は一見不便に感じられるかもしれませんが、保険制度の公平性を守り、不正加入を防ぐために欠かせない制度です。

免責期間があるからこそ、多くの人が安心して保険制度を利用でき、健全な運営が保たれています。しかし、免責期間中にがんと診断されれば、治療費を自己負担しなければならないリスクがあることも事実です。そのため、がん保険は「健康なうちに早めに検討する」ことが何より重要です。

契約前には免責期間の条件や免責期間中の保険料の支払い有無などを必ず確認し、家族はもちろん、保険会社やファイナンシャル・プランナーなどの専門家にも相談しながら自分に合ったプランを選びましょう。免責期間を正しく理解して備えておくことで、将来の安心は大きく高まります。

黒田尚子
監修 黒田尚子

1992年日本総合研究所に入社。在籍中にFP資格を取得し、1997年退社。1998年4月にファイナンシャルプランナーとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動や老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「就労リング」のファシリテーター、がんと暮らしを考える会のお金と仕事の相談員などに従事。2023年4月には、がん患者支援などを目的に患者家計サポート協会を設立し顧問を務める。近著は「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)

公式SNSアカウント一覧

  • YouTube
  • X
  • LINE