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がん保険の加入率はどのくらい?最新データで読み解くニーズと背景

がんは「二人に一人が生涯で罹患する」と言われる身近な病気です。そのリスクを背景に、多くの人ががん保険に加入していますが、実際の加入率はどのくらいなのでしょうか。
本記事では、最新データをもとにがん保険の加入率を解説し、加入が増えている理由や社会的背景、医療保険との違い、自分に合った選び方や見直しのポイントを整理します。

がん保険加入率の現状と背景

手を繋いで外を歩く3人家族 

諸外国に比べて、日本の公的医療制度はかなり手厚いとはいえ、2025年時点でがん保険・がん特約の個人加入率は約39.9%となっており、約4割の方が民間保険で備えていることがわかります。※

加入が進む背景には、がん治療のスタイルが変化していることがあります。入院中心だった治療が通院による長期治療へ移行し、薬剤費の高額化に伴って自己負担も増えています。さらに、治療のために働けない期間が生じれば、収入減への備えも不可欠となります。

加えて、診断一時金の複数回支払い、通院や薬物療法を対象にした給付、インターネットでの申し込み手続きなど、商品やサービスの利便性が向上している点も加入を後押ししています。年齢層や家族構成、就労形態によって加入の傾向に違いが見られるのも特徴です。

  • 出典:生命保険文化センター2025(令和7)年度「生活保障に関する調査」(速報版)

最新データで見るがん保険の加入率

最新の調査結果から、がん保険・がん特約が幅広い世代に利用されている実態がうかがえます。特に40代から60代にかけて加入意識が高く、20代では相対的に低めという年代差が見られます。※

また、医療保険と組み合わせて加入するケースが多く、診断時にまとまった給付金を受け取れる設計が主流です。近年では入院期間の短縮に伴い、通院による外来治療に対応した保障が注目を集めています。加入者の判断基準は「必要な時に確実に資金を確保できるか」という点にシフトしているのが特徴です。

  • 出典:生命保険文化センター 2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」

加入率の推移とトレンド

直近の全国調査では、世帯のがん保険加入率はおおむね6割前後で推移しています。近年は横ばいから緩やかな上昇が続いているのが傾向です。※
がん検診の受診率向上や治療様式の変化が需要を下支えする一方、物価上昇や家計負担の見直しが加入率の伸びを抑えている側面もあります。

商品トレンドとしては、診断一時金の複数回支払い、通院や薬物療法への手厚い保障、先進医療や患者申出療養など保険外診療に対する特約、再発・長期治療に備える給付設計、就業不能リスクに対応する保障の組み合わせなどが広がっています。若年層でも緩やかに加入率が上昇している点も注目されます。

  • 出典:生命保険文化センター 2024(令和6)年度「生命保険に関する全国実態調査」

加入率が高い理由と社会的要因

がん保険の高い加入率の背景には、まず「二人に一人が生涯でがんにかかる」という認知の広がりがあります。
さらに、高額療養費制度があっても先進医療の技術料や自由診療の費用、差額ベッド代、通院治療の増加や長期化による生活費や交通費など、公的制度でまかなえない支出が少なくないことも要因です。

治療と就労の両立による収入減への不安も加わり、診断給付金や通院給付が注目されています。検診や早期発見の啓発が進んだことも、がん保険を選ぶ後押しになっています。

がん保険が必要とされる理由とメリット

電卓と医療費の請求書のサンプル 

公的制度である高額療養費制度によって自己負担が一定額に抑えられるものの、がん保険の必要性は依然として高いと言えます。理由は、医療の進歩によって生存率が向上し、がん治療が長期にわたるようになり、薬剤が高額になってきたこと、公的制度の対象となる費用が積み重なって負担が少なくないこと等があげられます。

がん保険は診断一時金をはじめ、抗がん剤・放射線・手術に対応する通院給付や先進医療給付、再発・転移時の複数回給付など、治療の長期化と多様化に合わせた保障が特徴です。医療保険と補完関係にあり、両者を組み合わせることで経済的な不安を軽減できます。

がん治療の経済的リスクと自己負担

がん治療は公的医療保険で一部がカバーされても、治療が長期化すれば支出も継続します。高額療養費制度を利用しても毎月の自己負担は避けられません。さらに、公的保険の対象外となる先進医療や薬剤は大きな負担となります。

厚生労働省の報告では、陽子線治療の平均費用は約278万円、重粒子線治療は約324万円にのぼります。差額ベッド代、交通費、生活費なども全額自己負担となり、治療による収入減も重なることで、がん特有の経済的リスクが生じます。

  • 出典:厚生労働省「先進医療の各技術の直近の実施状況等について」

医療保険との違いと補完関係

医療保険は病気全般を広くカバーし、入院給付や手術給付が中心です。一方、がん保険はがんに特化し、診断一時金や通院給付、再発・転移時の保障など外来治療に対応しています。
両者を組み合わせれば、医療保険でベースを押さえつつ、がん保険で「診断直後にまとまった資金」と「長期通院への備え」を確保できます。保障の重複や条件の差異を確認することも重要です。

加入することで得られる安心感と備え

診断一時金を付加していれば診断直後に資金を確保できることは、治療選択を狭めないための大きな安心材料です。給付金を医療費だけでなく、生活費や住宅ローンの返済、教育費などに充てることで、貯蓄の取り崩しを抑制できます。結果として心理的負担が軽減され、治療と生活の両立が現実的になります。

自分に合ったがん保険の選び方と見直し

チェックリストを記入する 

がん保険を選ぶ際は保障内容を軸に検討しましょう。診断給付金の回数や金額、入院・通院の保障範囲、先進医療や女性特有のがんへの特約、定期型か終身型かなどを比較することが大切です。
ライフステージによって必要な保障額や種類は変わります。見直しは結婚・出産・転職・住宅購入・定年など節目に行いましょう。また、がん医療は日進月歩で変わってきますし、社会保障や税制など公的制度も頻繁に改正されるものです。
がん保険の見直しは、ライフステージの変化のような内的要因だけでなく、今の医療や社会環境に対応しているかどうかという外的要因の変化も併せて行いましょう。新契約が成立し、免責期間が過ぎてから解約することで、保障の空白期間を作らないことが重要です。

保障内容でチェックすべきポイント

診断給付金の回数・金額・条件、通院保障の充実度、先進医療特約や女性特有のがん特約の有無を確認する必要があります。また、待機期間や保険料の変動、付帯サービスなども比較しましょう。

診断給付金の回数・金額

診断給付金は一度きりか複数回か、支払間隔や対象範囲(上皮内新生物を含むか)を確認しましょう。複数回型は保険料が高めになるため、通院保障や先進医療特約とのバランスを考える必要があります。

入院・通院保障の充実度

通院給付金が診断直後から対象になるか、抗がん剤や放射線治療がカバーされるかを確認しましょう。旧契約では条件が厳しいこともあるため、見直しの際は重点的にチェックすべきポイントです。

先進医療や女性特有のがん特約

先進医療の実費型か定額型か、支払限度、対象範囲を比較しましょう。女性特有のがん特約では再発・転移時の給付や通院治療の可否、保険料の仕組みも重要です。

ライフステージに応じた選び方

独身期は割安な保険料を活かして最低限の保障を確保し、結婚・子育て期は通院長期化や収入減リスクに備える設計を重視します。50代以降は罹患リスクが高まるため、既存契約の増額や通院重視型への切替が現実的です。

見直しのタイミングと注意点

見直しは家計や収入の節目、医療の進歩や公的制度、商品の改定、保険料の更新時に行うのが効果的です。解約は新契約の免責期間が過ぎた後に行い、告知条件や待機期間、保障範囲を詳細に確認しましょう。

まとめ

がん保険の加入率は個人で約4割、世帯で約5割と高い水準にあります。背景にはがんの高い罹患リスク、公的制度でまかなえない費用、治療と就労の両立による収入減への不安があり、診断一時金や通院給付などの商品進化も加入を後押ししています。

ただし、加入率はあくまで参考値に過ぎません。重要なのは、自分のライフステージや家計状況に合った保障を選ぶことです。医療保険との補完関係を踏まえ、「必要な時に必要な額が出るか」を基準に見直しを行うことが、安心につながります。

黒田尚子
監修 黒田尚子

1992年日本総合研究所に入社。在籍中にFP資格を取得し、1997年退社。1998年4月にファイナンシャルプランナーとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動や老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「就労リング」のファシリテーター、がんと暮らしを考える会のお金と仕事の相談員などに従事。2023年4月には、がん患者支援などを目的に患者家計サポート協会を設立し顧問を務める。近著は「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)

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